プロモーションと価格弾力性
クーポン配布や値下げのような価格プロモーションの影響についてざっくり調べた備忘録です。
読んだもの(順番てきとう)
- マーケティングサイエンス入門(有斐閣アルマ)
- The long-term impact of promotion and advertising on consumer brand choice(1997)
- 本橋永至, 樋口知之. 市場構造の変化を考慮したブランド選択モデルによる購買履歴データの解析. マーケティング・サイエンス, Vol. 21, No. 1, pp. 37–59, 2013.
- Cents or Percent? The Effects of Promotion Framing on Price Expectations and Choice(2007)
それぞれの簡単なメモ書き
マーケティングサイエンス入門
第8章がプロモーションについて書かれていてとてもわかりやすい。プロモーションでは付き物な、需要の先喰いや先延ばしにも触れられている。 この本で紹介されていたGupta(1988)では、プロモーション効果分析モデルとしてロジットモデルによるブランド選択モデルと同時に、購買タイミングと購買量も同時確率としてモデリングしているらしい(1988年にそんなてんこ盛りモデル動いたんだろうか。。。)
複数ブランドのコーヒーの購買データを分析した結果、プロモーションによる売上増分の84%がブランドスイッチ、14%が購買間隔の短縮、2%が購買量の増加とのこと。ほとんどブランドスイッチなのね。購買間隔とか購買量はさっき出てきた先喰いのせいかもしれないから慎重に判断とのこと。 プロモーションってほとんど新規顧客獲得の為なのかも。アップセルをプロモーションで行おうと思っても難しいってことか。
The long-term impact of promotion and advertising on consumer brand choice(1997)
1997年の論文。ML系のカンファレンスペーパーを追っかけてる人からすると古の論文なんだろうな(私も古いと思ってしまった)。ちなみにさっきのGupta(1988)と同じ人がセカンドオーサーになっている。 これはプロモーションだけではなく、広告が与える影響についても分析したもので、1500世帯の8年間に渡るパネルデータを使っていた。商材は家事に関する消費財なのかな?(商品名は明かせません、みたいに書いてる。英語あってるはず)
広告とプロモーションが長期的なブランド選択に与える影響なんだけど、広告は価格・プロモ弾力性を下げるがプロモーションは上げてしまうらしい。特にnon-Loyalの方がLoyalに比べて影響を受けやすかったとのこと。これは直感的にも納得がいく。広告での刷り込まれてたら、高い・安いではなくブランドで選んでもらえる。一方で、何度もプロモーションもらってたら、プロモーションなしでは動かないユーザーになってしまう。Udemyとか、数万円する講座がたまに2000円くらいになってるけど、あれ平常時に購入する人いるんだろうか。。 それにしても、1997年にはこんな研究されてたなんて驚き。
これは最近のマーケティングサイエンスの論文でも感じるただのボヤキなのだが、使用データがスーパーの消費財ばっかりじゃない?カレールー、コーヒー、ケチャップなどなど。デジタルマーケだと、もっと突発的購買だったり、競合へのブランドスイッチ観測できなかったりするので難しい。あとそもそものデータサイズがスーパーデータとは桁違い。ID付きPOSは取りやすいけどね。そもそもそこまでビッグデータだったら階層ベイズとか言わずに、素直にML使えばいいんだろうか。ここには自分なりの解がない
市場構造の変化を考慮したブランド選択モデルによる購買履歴データの解析
あまりちゃんと読んでいないけど、状態空間モデルで価格弾力性の時間変化をモデリングしているっぽい。マーケティングサイエンスといえば、階層ベイズで消費者の異質性を取り込みがちだけど、十中八九今後の展望に「時間的異質性を考慮できるモデルへの拡張」って書いてある。でも実際パラメータの数増えすぎて大変そう*1
時変係数って基本ランダムウォークとして時間発展させるか、2階差分~0として滑らかさを付与するかってイメージだけど、前にUberがガウス過程で時変係数推定してるの思い出した。 Modeling Dynamic Heterogeneity Using Gaussian Processes。これもちゃんと読みたいなぁ
Cents or Percent? The Effects of Promotion Framing on Price Expectations and Choice(2007)
XX円OFFと、XX%OFFで消費者心理に与える影響ってどう違うの?という論文。
結論、XX円OFFよりもXX%OFFのほうが短期的リフトは望めるが、その後の顧客期待値(参照価格)が上がってしまい、値引きを辞めてしまうと客離れが起きやすくなってしまう。 典型的なプロモーション弾力性の上がった世界の出来上がりって感じかぁ。こういうプロモーション弾力性みたいな話すると、いつも前澤さんのお金配りを思い出す。