マーケティングサイエンス学習録

勉強したことをとりあえずここに集積していきます。

RFMでは捕捉できない消費者の異質性 ~クランピネスの導入~

RFM指標

マーケティングにおける代表的なメトリクスとして、Recency/Frequency/Monetaryの3つ、いわゆるRFM指標がある。 RFM指標で顧客のロイヤリティセグメンテーションしたり、色々と調理している人も多いと思う。 ただし、RFMはあくまでも結果指標なので、RFMをベースにあれこれ打ち手を考えるのは避けるべき*1

RFM指標では捕捉しきれない異質性

さてさて、タイトルの回収だが、RFMでは捕捉しきれない場合がある。たとえば

https://www.macromill.com/service/knowledge-blog/marketer-column/009/ から一部抜粋

みたいなケース。RF指標は同じであっても、習慣性や購買間隔が異なる場合がある。ECサイトで言えば、定期的に購入するユーザーと、たまにまとめ買いするユーザーが同じセグメントになってしまう。マーケターからすると、彼らには異なるアプローチをしたいはずである。

そこで、RFMに加えてClumpiness指標というものが提案されているらしい。元論文はこれ Zhang, Bradlow & Small(2015)。 Clumpiness=不均一性みたいな訳になっているが、個人的には行動の「ムラ」だと思うとしっくりくる。

諸々すっ飛ばして、その定義式だけ見てみると、要するにエントロピーだなこれは。

Clumpinessを使った分析例

Clumpiness指標をマーケティング実務応用する論文として、

www.jstage.jst.go.jp

を読んだ。Clumpinessを使って、購買や離反に対する知見獲得を試みている。ポケモンGOを題材に解析をしている。

離反傾向の分析として、生存時間分析を実施していた。結果はこんな感じ

論文から引用すると、

長期的な優良ユーザの育成のため に必ずしも単なる高頻度の利用が有利に働くわけでは ないことを示しており,同一の利用頻度でもその利用 パターンに顧客の離脱までの期間が影響を受けるこ とを意味している.このように,初期の利用履歴デー タから離脱する確率の高いユーザのみを早期に発見 可能であるという点で,従来の RFM 分析に加えて Clumpiness を考慮することはマーケティング戦略上 重要であるといえる.

ということらしい。やはり同じようなFrequencyであっても、行動に「ムラ」があるユーザーは離反傾向が強いとのことで納得感がある。 彼らも論文中で「熱しやすく冷めやすいユーザー」と表現している。

機会があったら実務でも検討してみよう

*1:ロイヤルな顧客はFrequencyが高い!顧客全員のFrequencyをあげよう!!みたいな情報量0なメッセージになる